FROM FUSA

09/3/2 『嗚呼 どぶ汁』

喰い物の事を書くというのは実はあまり良くない事だと思っている。 以前、八戸のフジツボの酒蒸しの話をトランヴェールに書いて、お叱りをうけた事があるからだ。 フジツボの卸値が上がってもうウチでは出せないと馴染みの呑み屋の店主は言う。 これではオレが損をする。あんな旨い物を喰えないなんて何て馬鹿をしたんだろうと思った。 でも懲りずにまた書いてしまいますね。 ずばり“どぶ汁”だ。

年が明け、ぐっと寒さが身にしみる頃、五浦のどぶ汁が無性に喰いたくなる。 ジャーマネ古家に2月は茨城北部あるいは福島南部に仕事を入れろと言う、いや言わなくても入っている。 年明けはどうにもどぶ汁口になる、しみじみ旨いアンコウの鍋料理だ。 どこよりも新鮮なはずなので普通のアンコウ鍋も旨いには旨いが、どぶ汁ははっきり言って旨味のグレードが違う。 一切水を使わず大根とアンコウ自らの水分だけで出来上がるらしい。そこにたっぷりのアンキモをすりつぶし入れる。

初めに汁だけをすすると少しキツい味だが、野菜、アンコウの身をドサッと入れ喰うとちょうどいい塩梅になる。

あやしい部位の肉がとてもとても旨い。特に女性は翌朝肌がつるつるになるらしい。コラーゲンもギンギンだ。 オレは酒飲みだから、あらゆる鍋料理のあがりの雑炊は遠慮する方だが、どぶ汁だけは別。腹一杯に喰ってしまう。鍋底を引っ掻いても喰いたい。

さて、ここ五浦は岡倉天心縁の地。

ぐるり、ちょうどよい散歩コースになっていて中高年カップルも目立つ実にオレ向きのお土地柄。

美しい木々や、雄大な太平洋に目をやったり、天心の青春時代にフムフムしたりするが、本当のところどぶ汁の事しか考えられないオレなのだ。

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